32点だった英語が、58点まで伸びた冬

-ADHD・学習障害グレーゾーンの中2男子の小さな奇跡-
「英語なんて、どうせ無理だよ。」
中学1年生の春。
彼はそう言って、ノートを閉じてしまう子でした。
授業中は集中が続かず、気づけば別のことを考えてしまう。
単語を覚えようとしても、頭に残らない。
文章になると、どこを読めばいいのか分からなくなる。
ADHDと学習障害の“グレーゾーン”。
診断がはっきりつかないからこそ、周りにも理解されにくく、
本人も「自分は努力が足りないんだ」と責めてしまっていました。
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英語32点。自信が崩れた日
中学1年生の1学期最後の定期テスト。
返ってきた答案には、赤い数字で「32点」。
彼は何も言わず、机の奥にしまい込みました。
お母さんは、そっと声をかけました。
「頑張ってないわけじゃないよね。
ただ、やり方が合ってないだけかもしれない。」
でも本人は首を横に振るだけ。
「やっても無理。俺、英語だけはダメ。」
その言葉が、胸に刺さりました。
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中1の夏休み、家庭教師を始めた理由
夏休みが始まる頃。
家族は悩みに悩んで、家庭教師をお願いすることにしました。
集団塾ではついていけない。
学校の授業もスピードが速すぎる。
だからこそ、
“この子のペースで進められる学び”が必要でした。
最初の授業の日。
先生が言った一言が、彼の表情を少し変えました。
「大丈夫。英語は才能じゃなくて、積み重ねで伸びるよ。
今日は“できる形”を一緒に探そう。」
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勉強じゃなく、「できた」を増やす時間
最初は単語を10個覚えるだけでも大変でした。
でも先生は、怒りませんでした。
- 覚えられないのは努力不足じゃない
- やり方を変えればいい
- 小さく区切れば必ず進める
そうやって、毎回少しずつ。
「今日は3つ覚えられた」
「この文だけ読めた」
「テストで1問当たった」
その積み重ねが、彼の中で初めて“自信”になっていきました。
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中2になっても伸び悩む日々
中学2年生。
英語は少しずつ分かるようになってきたけれど、
テストになると点数が安定しない。
集中が切れて問題を飛ばしてしまう。
時間配分がうまくいかない。
「やっぱり俺、ダメかも…」
そんな日もありました。
でも先生は言いました。
「点数は急に跳ねない。
でも君は、確実に前に進んでる。」
その言葉に、彼は黙ってうなずきました。
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冬、最後の定期テスト
中学2年生の冬。
学年最後の定期テストが近づいていました。
彼は、机に向かう時間が増えていました。
英語のワークを開く姿も、もう逃げていませんでした。
そして迎えたテスト当日。
終わったあと、彼はぽつりと言いました。
「…前より、読めた気がする。」
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返ってきた答案。そこには…
数日後。
先生から答案を受け取った瞬間、
彼の目が止まりました。
「58点」
最初の32点から、26点アップ。
決して満点じゃない。
でも彼にとっては、人生で初めての“英語での成功”でした。
彼は小さく笑って言いました。
「俺、英語ちょっとできるようになったかも。」
その声を聞いたお母さんは、思わず涙がこぼれました。
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点数以上に大きかったもの
この58点は、ただの数字じゃありません。
- 自分を責め続けていた子が
- 「無理」を抱えていた子が
- 少しずつ積み上げて
- 「できた」に変えた証
グレーゾーンでも、特性があっても、
伸びる道は必ずある。
大事なのは、合った学び方と、寄り添う大人。
そして何より、
本人が「もう一度やってみよう」と思えたこと。
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最後に
彼は今も、完璧ではありません。
でも、あの冬の58点が教えてくれました。
「自分にもできる」
その一歩が、未来を変えていくことを。







